日本臨床外科学会雑誌
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門脈ガス血症を呈した非閉塞性腸管虚血症の1例
小林 聡山口 晃弘磯谷 正敏堀 明洋金岡 祐次山本 竜義金澤 英俊高橋 吉仁笹本 彰紀伊神 剛
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1999 年 60 巻 1 号 p. 139-142

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抄録

症例は81歳,男性.突然の強い腹痛を主訴に当院を受診した.腹部所見は全体に軽度の腹膜刺激症状を伴う圧痛を認め,直腸指診では直腸癌を触知した.腹部CTで腹水,小腸壁の肥厚と肝内に門脈ガスを認め,上腸間膜動脈造影では閉塞所見はなかったが,不整狭小化像を認めた.腸管虚血症を疑い緊急開腹手術を施行した.回腸が虚血により壊死していたため小腸を100cm切除し端々吻合し, S状結腸で双口式人工肛門を造設した.術後は患者の全身状態を考え,直腸癌に対し放射線治療を施行後,術後第61病日に退院した.
本症例は血管造影の所見と摘出標本に血管病変を認めなかったことから,非閉塞性腸管虚血症と診断した.門脈ガス血症は虚血性腸疾患に合併することが多いので,まず念頭に置き精査すべきであるが,他の原疾患も十分に考え手術適応を決めるべきである.

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