日本臨床外科学会雑誌
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胃癌の虫垂転移による穿孔性虫垂炎の1例
龍沢 泰彦野崎 善成黒川 勝山田 哲司北川 晋中川 正昭
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キーワード: 胃癌, 虫垂転移
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1999 年 60 巻 1 号 p. 143-148

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抄録

症例は58歳の男性で, 1994年5月に穿孔性虫垂炎の診断にて緊急手術を施行した.虫垂は腫脹,硬化し,ダグラス窩には腹膜播種を疑わせる白色小結節が散在していた.虫垂切除およびドレナージ術を施行し,小結節も一部切除した.病理診断は虫垂,ダグラス窩の小結節ともに低分化腺癌で,他臓器からの転移が疑われた.術後の胃内視鏡検査にてBorrmann 4型腫瘍を認め,生検の結果,虫垂と同様の低分化腺癌と診断された.胃癌の虫垂転移,腹膜播種の診断にて,虫垂切除後24日目に幽門側胃切除術を施行, H0 P3 T3 N2で,病理診断はpor2, se, n2(+)であった.胃切除後3年2カ月で癌性腹膜炎にて死亡した.胃癌虫垂転移の本邦報告例は16例のみで,胃癌術後に急性虫垂炎として発症する例が多い.自験例は胃癌の診断前に虫垂の穿孔で発症した稀な例である.虫垂炎の手術の際にも(特に胃癌術後の場合は), 術中の十分な観察と術後の病理検索が重要と考える.

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