日本臨床外科学会雑誌
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局所切除術が有効であった肛門部Bowen病の1例
河原 秀次郎平井 勝也青木 照明長 剛正鈴木 俊雅武内 孝介
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1999 年 60 巻 1 号 p. 165-167

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抄録

症例は38歳女性.平成3年ごろより肛門周囲のerosionに気づいていたが放置していた.平成8年2月ごろより肛門痛が出現し近医を受診した.生検組織診断で肛門部Bowen病と診断されたため,当院皮膚科に紹介された.しかし病変の直腸への浸潤が疑われたため精査・加療目的で当科に紹介された.術式は, (1)病変が歯状線にまで浸潤していなかったこと, (2)術前検査で鼠径リンパ節などへの転移を強く示唆する所見が得られなかったこと, (3)本人が直腸切断術を強く望まなかったこと,などを考慮し肛門部病変の局所切除を試みた.永久標本では腫瘍細胞の表皮基底層の破壊像がみられず,術後2年以上経過した現在再発は認められない.切除marginが5 mm以上確保されていれば予後が良好であるため,病変が歯状線まで浸潤していない場合には直腸切断術の選択はなるべく控え,確定診断,深達度診断および治療を含め,まず局所切除術を試みるべきであると考えられた.

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