1999 年 60 巻 1 号 p. 178-182
症例は65歳,男性.既往歴として42歳時胆嚢摘出術.右上腹部不快感と発熱を主訴に来院. T. Bilや肝胆道系酵素の上昇を認め,精査目的に入院した.腹部USやCTでは総胆管の拡張を認めたが,明らかな結石や腫瘍と考えられる所見は指摘できなかった. ERCPでは,肉眼的にVater乳頭部には異常なかったが,総胆管末端に陰影欠損を認め,臨床経過と既往歴も合わせて総胆管結石と診断し開腹手術を行った.術中胆道内視鏡では総胆管結石は認められず,総胆管末端に乳頭状の隆起性病変を認めた.生検では乳頭腺腫と診断されたが,悪性腫瘍の否定もできないため,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.摘出標本では,下部胆管末端に乳頭状隆起性病変を認めた.組織学的には中等度のdysplasiaを伴う乳頭腺腫と診断された.
肝外胆管に発生する腺腫の報告は少ないが,癌の合併例や局所切除後の再発例もあり,根治切除が望ましいと考えられた.