1999 年 60 巻 1 号 p. 220-222
症例は22歳の女性.神経性食欲不振症で精神科入院中の平成8年7月1日,突然左下肢の疼痛,冷感を生じ当科に紹介となった.緊急血管造影を施行し,左総腸骨動脈の完全閉塞を認めたため,ウロキナーゼの動注を行い,続けて塞栓除去術を施行した.塞栓は病理検索で真菌塞栓と診断した.抗真菌剤,抗生剤の投与と抗凝固療法を施行し,下肢の血流は改善できたが, 7月27日夕方から急激な意識レベルの低下を認め頭部CT検査で大脳左半球に約5cm大の脳膿瘍を認め,その後全身状態が急激に悪化し死亡した.病理解剖では僧帽弁に中等度の真菌性心内膜炎を認め,塞栓の原因病変と考えた.真菌性塞栓症により全身に真菌感染が生じると予後が不良となるため,全身検索を注意深く行う必要があると考えられた.