1999 年 60 巻 1 号 p. 223-227
われわれは,同時性食道未分化癌・早期胃癌に対し食道癌切除術後に内視鏡下胃粘膜切除術を行った1例を経験した.
症例は66歳,男性. Ei.3型の食道癌に対し3領域リンパ節郭清を含む食道切除を施行し,後縦隔・亜全胃管再建を行った.病理組織学的検査では,未分化癌, a2, n2(+), ly0, v0, stage IIIであった.術後は補助療法を行わず外来通院となった.術7カ月後の内視鏡検査で,幽門前庭部の後壁よりにO-IIa型の胃癌を認めた.この病変に対して,内視鏡下粘膜切除術を行ったところ,胃癌はm, ly0, v0で根治できたと考えられた.現在初回手術後32カ月経過しているが,再発の徴候なく,健在である.食道未分化癌は食道腫瘍のうちでは稀で,長期生存は望めないとされる.しかし,このような症例でも術後の厳重な経過観察,重複癌の早期発見と治療により予後の向上が期待できる.