1999 年 60 巻 1 号 p. 42-45
症例は40歳女性で, 2年前より左乳腺腫瘤を自覚していたが放置していた.最近3カ月間に急速に増大し,高熱を伴ったため当科へ来院した.左乳房全体を占める弾性軟の巨大腫瘤で,皮膚に出血を伴う潰瘍を形成し,異臭を放っていた.また領域リンパ節は触知されなかった.以上の経過と所見により,乳腺葉状腫瘍が疑われた.高熱で敗血症への移行も考えられたため,翌日緊急に単純乳房切除術を施行した.摘出標本の割面では,内部はスポンジ状で,多量の血液を貯留していた.病理組織診断では,辺縁にのみ乳頭腺管癌の細胞塊を認め,多くは出血,壊死を呈していた.腫瘍内に大きな血腫を認める症例は少ないため報告する.