日本臨床外科学会雑誌
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乳癌根治手術10年後の肝単独転移に対し肝切除を行った1例
斎藤 功田口 和典松下 通明高橋 弘昌渡邊 健一藤堂 省
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キーワード: 乳癌, 肝転移
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1999 年 60 巻 1 号 p. 56-60

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抄録

症例は58歳女性. 1985年Stage IIIa乳癌の診断で乳癌根治手術施行後,外来follow中であった.この間,血液生化学検査・腫瘍マーカー・腹部超音波検査に異常を認めなかったが1995年9月頃より心窩部痛を訴え,腹部超音波検査にて肝左葉内側区に直径約3cmのbull's eye signを呈する腫瘤を認め, 1995年12月19日当科入院となった.乳癌肝転移を疑い1996年1月24日HrO (S 4) 施行.病理組織学的検査の結果は充実腺管癌であり,乳癌肝転移と診断された. CAF療法後経過は良好で,現在まで再々発の兆候を認めていない.乳癌肝転移は多発性かつ他臓器転移を伴うことが多く,一般には肝切除の適応になるものは少ない.また, 10年のdisease free interval後の肝への単発転移症例の報告はない.しかし,本症例のように切除可能な場合には,積極的な肝切除も有効な治療法の一つと考えられた.また乳癌根治手術後,長期に渡るfollowの重要性が認識された.

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