塩酸服用による自殺企図により,腐食性食道炎による良性瘢痕性食道狭窄を来した64歳の男性に対して, balloonによる拡張治療を試みたが,効果不良であったため, expandable metallic stent (EMS) の留置による食道拡張を試み,良好な結果を得た.食道狭窄に対するステント留置は,現在まで,主に悪性腫瘍によるものに対してであり, QOLの維持目的が殆どである.今回われわれは精神的身体的状態の不良な患者に対して,リスクを伴う手術に替わり,最近開発されたEMSを使用することにより,本患者は食事摂取,退院可能となった.これにより,手術も考慮においた.全身状態の改善が期待され,今後の器材の研究開発により,さらに安全な一治療法となりえると考えられる.