食道類基底細胞癌の2例を経験した.症例1は64歳,男性.摘出標本では6.0×3.0cmの潰瘍浸潤型腫瘍とその0.5cm肛門側にびらんを認めた.前者は類基底細胞癌,後者は中分化扁平上皮癌で,組織学的進行度はa2, ly2, v1, n4(+), ow(-), aw(-), stage IVであった.術後4カ月目にUS, CTで胸水,腹水および多発肝転移を認め,術後6カ月目に癌再発により死亡した.なお,剖検では類基底細胞癌の広範な再発を認めた.症例2は73歳,男性.摘出標本は5.0×4.5cmの隆起型腫瘍,4.0×7.0cmの潰瘍浸潤型腫瘍を認めた.前者は類基底細胞癌,後者は中分化扁平上皮癌で,組織学的進行度はa1, ly3, v2, n3(+), ow(-), aw(-), stage IVであった,術後1年3カ月目に癌性胸膜炎により死亡した.食道類基底細胞癌は扁平上皮癌とは異なった発育形式を呈する悪性度の高い腫瘍と考えられており,自験2例を含め56報告例の文献的考察を行いその特徴的所見につき報告した.