日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
小網原発神経鞘腫の1例
中村 徹北村 宏岩瀬 正紀伴野 仁久世 真悟豊田 太
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 60 巻 2 号 p. 530-533

詳細
抄録
症例は48歳男性.健康診断の腹部超音波検査にて腹腔内腫瘤を指摘され,当院紹介受診となった.来院時自覚症状は無く,腹部理学的所見上も異常所見を認めなかった.腹部超音波検査にて肝左葉と腹部大動脈の間に腫瘤を認め,精査のため入院となった.腹部CTでは周囲との境界明瞭で,造影されない腫瘤として描出された.腹部血管造影では明らかな圧排像や腫瘍濃染像を認めなかった.以上より後腹膜腫瘍の術前診断にて,手術施行した.開腹すると,最大径3cmの腫瘍が小網内に胃角小彎と接して存在し,周囲の臓器への浸潤,癒着等はみられなかった.小網の一部とともにこれを切除した.病理組織学的検査にて,柵状配列を示す円形の核を有する紡錘状の腫瘍細胞の増殖を認めた.腫瘍細胞はS 100蛋白染色陽性で, Antoni A型の神経鞘腫と診断した.本症は頻度の低さに加えて自覚症状や理学的所見,画像診断上特有なものがなく,術前診断は困難であるが,同部位に発生する腫瘍の鑑別すべき疾患の1つであると思われた.
著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top