日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
食道表在癌に対する非開胸食道抜去術の検討-開胸根治術との比較-
金田 邦彦石川 羊男平井 昭博西原 徳光中江 史朗河村 貴寒原 芳浩河野 範男中谷 正史
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 60 巻 3 号 p. 614-619

詳細
抄録
当科で切除した組織学的深達度がsmまでの食道表在癌31例のうち非開胸食道抜去術を行った21例を対象とし,右開胸開腹による食道切除術(以下標準術式)を行った表在癌症例10例と手術時間,出血量,合併症,予後等について比較検討した.手術時間は抜去術4.9±1.1時間,標準術式7.5±1.9時間,出血量は抜去術620±240ml,標準術式1.190±1,100mlであった.術後合併症として縫合不全6例,反回神経麻痺2例,開胸2例が認められた.再発転移例は21例中6例(いずれも深達度sm) で再発形式は遠隔転移4例(肝2例,肺1例,皮膚1例),リンパ節転移2例(縦隔1例,頸部1例)であった.死亡例はsmで3例を(原病死2例,他病死1例)認めたが,深達度mの症例は10例全例無再発生存中である.
非開胸食道抜去術は深達度mの食道表在癌に対する治療方式として開胸開腹の標準術式に比較して根治性を損なわずかつ低侵襲の手術術式であり, EMRの適応となりにくい表層拡大型の病変や多発病変に対しても有用な治療方法であると考えられた.
著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top