抄録
39歳男性同性愛者に発症したアメーバ性肝膿瘍の1例を経験した.右季肋部の圧痛と熱発を主訴として他院から紹介され入院,肝S7に径8cmの膿瘍を認めた.エコーガイド下経皮的膿瘍ドレナージを施行したが効果はなかった.2日後,膿瘍が腹腔内に穿孔したため,開腹・腹腔ドレナージ術を施行した.その後メトロニダゾール投与を開始しこれが奏効,全身状態は改善した.ドレーンからの逆行性細菌感染を併発したため抜去時期がおくれたが抗生剤でコントロール後抜去し徒歩退院した.
アメーバ症は本邦では1980年以降急速に増加し,その多くが男性同性愛者間でsexually transmitted amebiasisの形で流行していると考えられる.診断は血清学的検査が最も有効である.肝膿瘍をみたらアメーバ性を疑い,早期にメトロニダゾールを投与することが重要で,ドレナージは特殊な場合を除き適応にはならないと考えられた.