日本臨床外科学会雑誌
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80歳以上高齢者胃癌症例の臨床成績と手術術式の選択
60歳代手術症例との比較
下松谷 匠堀内 哲也吉田 誠天谷 博一青竹 利治打波 大村岡 隆介
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1999 年 60 巻 9 号 p. 2305-2310

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抄録

今回80歳以上の高齢者胃癌の術後合併症発生の因子を明らかにするため60歳代の手術症例 (n=137例)と80歳以上群の手術症例 (n=46例)を比較検討した. 1. 臨床因子: 80歳以上群で早期症例は少なかったが,占拠部位,肉眼型,組織型では差を認めなかった. 2. 術式:切除部位別では差がなかったが, 80歳以上群で非切除例がやや多かった. 80歳以上群で郭清度の低いものが多く,他臓器の合併切除は少なかった. 3. 合併症:術前合併症は80歳以上群で循環器系,脳神経系が多かった.術後合併症では60歳代で膵液瘻,縫合不全など手術に関係するものが多かったが, 80歳以上群では呼吸器,脳神経系などの全身的なものが多かった. 4. 術後成績:合併症発生率は手術時間が3時間以上の群,胃全摘および噴門側胃切除群,他臓器合併切除した群で有意に発生率が高かった.累積生存率は有意に60歳代が良好であったが,他病死を除く相対生存率は差を認めなかった.以上より根治性を追求するより術後合併症をさける治療方針を選択すべきと考えられる.

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