症例は45歳女性,主訴は左乳腺腺瘤.左乳房C領域に3×2cm大,表面平滑で弾性硬,境界明瞭で可動性良好な腫瘤を認めた.マンモグラフィー,超音波検査にて乳癌を疑い生検を行った.病理組織学検査,免疫組織染色にて悪性リンパ腫, diffuse, large cell, T-cell typeと診断した.非定型的乳房切断術 (Patey法)を施行し,腋窩リンパ節に1個転移を認めた.術後2カ月半で縦隔に再発したがCHOP-Bleo療法にて一時軽快した.しかし1年7カ月後には白血化して死亡した.この症例は抗HTLV-1抗体陽性のためATLのリンパ腫型と考えられたが,乳腺のT細胞悪性リンパ腫の多くが抗HTLV-1抗体陽性でしかも予後が不良であるため,これらの症例は乳腺原発T細胞性悪性リンパ腫と言うよりむしろ, ATLのリンパ腫型が乳腺に腫瘤を形成したと考え,十分な化学療法を行う必要があると思われた.