1999 年 60 巻 9 号 p. 2344-2348
食道に発生する顆粒細胞腫 (granular cell tumor: 以下GCT) は比較的稀な疾患とされていたが,近年,内視鏡診断の進歩に伴い報告例が増えてきている.食道の顆粒細胞腫は,上部食道に少なく,中下部食道に好発し,病理組織学的には免疫組織染色でS-100蛋白の存在が証明され,内視鏡的に切除可能なものが多い.症例は47歳女性,内視鏡にて頸部食道に隆起性病変を指摘された.術前検査にて,頸部食道に存在する長径40mm大の卵円形の粘膜下腫瘍と診断し,外科的切除を行った.摘出標本は, 40×30×25mm大の充実性の腫瘍で,割面は黄白色調を呈し,病理組織診断において,顆粒細胞腫の診断を得た.食道原発のGCTは頸部に発生することは稀とされている.