1999 年 60 巻 9 号 p. 2353-2356
49歳男性.検診で胃の病変を指摘されたため,精査加療目的で当院を受診された.上部消化管内視鏡検査によってcardia近傍に直径1cmの粘膜下腫瘍を確認した.生検鉗子による操作では,腫瘍の粘膜内での可動性が高く,腫瘍と固有筋層との関連性はないと思われた. 2週間後に粘膜下腫瘍の内視鏡的切除を試みた.腫瘍切除術後,切除面に固有筋層が観察されたが,出血および穿孔はみられなかった.また術後病理組織検査では,腫瘍は被膜に包まれて切除されており,固有筋層成分はみられず,内視鏡的切除による固有筋層の損傷は軽度と思われた.しかし内視鏡治療後約7時間経過してから胃穿孔が生じ再来院した.内視鏡的切除術に伴い固有筋層の損傷が軽度であり,術直後穿孔がみられなくても,術後経過してから穿孔する可能性を決して否定できないため,切除後の粘膜欠損部を閉鎖することが重要と思われた.