1999 年 60 巻 9 号 p. 2362-2366
症例は86歳の女性.幽門輪から十分距離がある隆起型の早期胃癌に対し,幽門保存胃切除術を施行した.術後4日目より経口摂取を開始するも,術後10日目より嘔吐が出現,絶飲食とした.経口透視では,残胃は著明に拡張し,十二指腸への造影剤の流出は全く認められなかった.術後20日目より2週間erythromycin 600mg/日の経口投与を行った.術後31日目には嘔気,嘔吐は消失,経口摂取を再開した.以後順調に経過し,経口摂取量も術前とほぼ同量となり,術後44日目に退院となった.幽門保存胃切除術を施行する際には迷走神経幽門洞枝の温存や幽門側切離部位に注意を払うとともに,術後胃内容排出遅延が認められた場合, motilin receptorのagonistで,消化管運動亢進作用があるとされるerythromycinの経口投与は,有効な治療法のlつと考えられた.