日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
胃切除後に十二指腸重積をきたしたVater乳頭部癌の1例
新谷 康坂本 嗣郎坂本 知三郎水野 均菅野 祐幸
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 60 巻 9 号 p. 2395-2399

詳細
抄録

65歳,男性. 14年前に胃潰瘍穿孔にて幽門側胃切除術, Billroth I法再建の手術歴がある.腹部膨満感を主訴に来院.上部消化管造影にて残胃の拡張を認め,内視鏡検査にて吻合部肛門側に絨毛状隆起性病変を認めたが,生検でGroup IIIであった.組織学的に腺窩上皮が乳頭状に増生していたことから,吻合部肛門側十二指腸に発生した腺腫による狭窄と診断し,開腹手術を施行した.手術所見では十二指腸下行脚に鶏卵大の腫瘍が存在し,腫瘍を先進部として十二指腸重積をきたしていた.術中迅速切片にてpapillary adenocarcinomaと判明し,膵頭十二指腸切除術を施行した.術後診断はVater乳頭部癌であった.術後15カ月目の腹部CTで肝転移を認めている.
無黄疸でかつ十二指腸重積をきたした極めて稀な発育形態を示した乳頭部癌の1手術例を経験した.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top