日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
腸間膜静脈血栓症により広範囲回腸壊死をきたした1例
山内 希美山内 一田辺 博
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 60 巻 9 号 p. 2410-2413

詳細
抄録

脳出血にて加療中に腸間膜静脈血栓症による広範囲回腸壊死をきたした1例を経験した.症例は72歳,女性.主訴は腹部圧痛,下血. 1997年10月16日,発語ができず,脳出血,脳室内穿破と診断された. 1998年2月2日より下血が認められ,内視鏡にて上下部消化管に異常を認めず保存的治療を施行していたが,血圧低下をきたし,腹部に圧痛および筋性防御が出現したため2月6日に外科へ紹介となった.エコーガイド下に腹腔内穿刺を施行したところ混濁した血性腹水を認めたため,消化管穿孔と診断し緊急開腹術を施行した.約1mにわたる回腸が壊死に陥っており,腸間膜静脈は血栓にて閉塞されていた.壊死小腸を切除した,腸管が虚血状態となると梗塞や壊死に陥り,下血は腸管の強い浮腫や壊死を示唆している.また腸管が壊死に陥った場合の予後は不良とされている.血管病変を合併した急性腹症は本症も念頭に入れ,早期診断治療にあたることが重要と思われた.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top