1999 年 60 巻 9 号 p. 2423-2425
外鼠径ヘルニア内容が急性蜂窩織炎を生じた虫垂突起であったl例を経験した.症例は69歳,男性.右鼠径部の有痛性腫瘤を主訴に来院した.経過中,嘔気,嘔吐はなかった.腹部は平坦で疼痛は認めず,腸蠕動音も正常であった.血液検査では白血球数, CRP値の上昇を認めた.腹部単純X線写真では,イレウスの所見は認めなかった.腫瘤上の超音波検査では,液体の貯留および腫大した虫垂突起と考えられる構造物を認めた.鼠径ヘルニア嵌頓と診断し緊急手術を施行した.ヘルニア嚢は肥厚緊満し,嚢を切開すると膿性腹水が排出され,発赤腫大し穿孔した虫垂突起を認めた.内鼠径輪を開大することにより容易に虫垂切除を行え, iliopubic tract repair法でヘルニアは修復した.術後経過は創部感染も認めず良好であった.