1999 年 60 巻 9 号 p. 2442-2447
症例は67歳と17歳の女性で,共にUS, CT, MRI, ERP, 血管造影にて膵尾部嚢胞性疾患と診断され,悪性疾患が否定できず開腹手術を施行した.両症例とも病変は脾臓との連続性はなく,病理組織学的に嚢胞上皮は重層扁平上皮で被覆されており,皮膚付属器などを伴っておらず,その外側に脾組織が認められたため膵尾部副脾に発生したepidermoid cystと診断された.脾臓は中胚葉由来の臓器で上皮成分を欠くため嚢胞を形成しにくく,さらに副脾に発生した嚢胞は稀である.膵尾部副脾のepidermoid cystは報告例も少なく他の膵嚢胞性疾患との鑑別が問題となるが,今回2症例を経験したので文献的考察を加えて報告した.嚢胞被覆細胞の起源については,嚢胞周囲の線維組織内に膵管組織が認められ嚢胞上皮との連続性が示唆されたことより,膵管上皮の膵尾部副脾への迷入によるのではないかと思われた.