1999 年 60 巻 9 号 p. 2474-2478
横行結腸癌腹壁浸潤,卵巣腫瘍腹壁再発に対し,大腿筋膜張筋弁・筋皮弁により腹壁再建を行った2症例を経験した.症例1は横行結腸から進展するneuroendocrine carci-nomaで横行結腸部分切除,小腸・胃・腹壁合併切除を行い右大腿筋膜張筋弁にて再建した.症例2は恥骨直上のmucinous adenocarcinomaであり,腹直筋を置き換えるように皮下組織まで進展しており,左大腿筋膜張筋皮弁にて再建した.症例1は原疾患の悪化のため早期に失ったが, 2例とも腹部創感染やヘルニアなどの発生は認めなかった.この腹壁再建方法は,感染の危険性などがある消化管再建を伴う手術や治癒遷延が危惧される症例の腹壁再建には適した方法であり,一般外科医にとっても施行可能な腹壁再建方法と考えられた.