1999 年 60 巻 9 号 p. 2484-2488
幽門輪温存膵頭十二指腸切除術後8カ月を経て発症した汎発性腹膜炎の症例を経験した.初回手術後に膵空腸吻合部縫合不全を発症し,保存的に治癒したが,治癒過程において吻合部の狭窄機転をきたしたと考えられた.残膵の軽度膵管拡張と実質の分節状低吸収域を認め,膵液流出障害による限局性膵炎と考えた.術後外来での経過観察中に突然の腹痛で発症.汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.腹腔内にAmylase高値の多量の膿性貯留液を認めた.炎症は残胃後面の残膵尾部付近に著明であり,残膵の炎症に起因する汎発性腹膜炎と判断した.術後は胃後面に留置したdrainから純粋膵液ではないがAmylase高値の汚染浸出液が持続し,膵管の破綻を疑わせた.本症例は,縫合不全を契機に膵液流出障害を生じ,癒着による腸管内圧亢進て,感染性に膵管破綻を来したと考えられた.