1999 年 60 巻 9 号 p. 2507-2511
症例は74歳女性で,食欲不振・全身倦怠感を主訴に来院した.上部消化管透視で胃はほぼ全長にわたり臓器軸性に捻転した状態で縦隔内へ脱出していた.さらにCT, MRIで小腸,横行結腸が縦隔内へ脱出し,その他に胆石を認めた.また注腸透視で異常な可動性を有する上下行結腸を認めた. upside down stomach, 総腸間膜症,膀ヘルニア,胆石症の診断で, Nissen fundoplication+胃底部・胃後方固定+幽門形成術,虫垂切除術,膀ヘルニア根治術,胆嚢摘出術を施行した.
本邦におけるupside down stomach症例は極めて稀であり,筆者らが検索した範囲では自験例を含め10例が報告されているにすぎず,また総腸間膜症・臍ヘルニア合併例は他に報告例を認めなかった.自験例は,先天的に結合織の癒合不良や弾力性に問題があったのではないかと推測された.