日本臨床外科学会雑誌
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総胆管拡張を伴った胆石症に対するmagnetic resonance cholangiographyの有用性と問題点
樋口 卓也森本 芳和角村 純一宮崎 実
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キーワード: 胆石症, 総胆管拡張
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2000 年 61 巻 12 号 p. 3183-3188

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抄録

総胆管の拡張をきたした胆石症例(径10mm以上)に対し,術前にmagnetic reasonance cholangiography (MRC)検査を施行し,開腹所見をもとにその有用性と問題点について検討した.対象症例は1996年6月より当科にて手術を施行した総胆管の拡張を伴う胆石症例27例で,男13例,女14例,平均年齢は68.2±11.2歳である.
術前検査として,腹部超音波検査(US),腹部CR検査を全例に施行し,胆道系の評価としてintravenous cholangiography (IVC)・endoscopic retrograde cholangiopancreatography (ERCP)あるいはpercutaneous transhepatic cholangiography (PTC)を,また,禁忌症例を除く22例にMRC検査を施行した,総胆管の最大径は10~45mm (15.9±7.9mm)であった.
使用機種はShimazu Magnex α II (0.5-T)を用いfirst spin echo法によった.測定時体表コイルを併用し,息止め時間は10秒であり,測定回数は9回とした.造影剤は使用していない.
対象症例の手術内容は,総胆管切石術が20例,胆嚢摘出術6例,胆管空腸吻合術1例であり,総胆管結石を21例で認めた.胆摘術のみの症例は術中造影検査にて総胆管に結石のないことを確認している.
開腹所見と術前の画像検査所見を比較検討すると,US検査では総胆管内結石の有無を正診しえたのは27例中11例 (40,7%) であり,CT検査の正診率は62.9%であり,IVCでは68.4%であった.
MRC検査の正診率は86.3%であり,開腹既往歴,造影剤アレルギー症例および黄疸症例においても胆道系ならびに結石像の鮮明な画像がえられ,また,3mm以下の微細結石症例の検索を可能であった.しかしながら,胆嚢内の結石嵌頓,すなわちnegative cholecystogram を示す症例においても胆嚢が過大に描出され,また傍乳頭部憩室の検索には限界がみられた.

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