2000 年 61 巻 12 号 p. 3194-3198
下咽頭癌術後頸部乳麋瘻に対して胸腔鏡下胸管クリッピング術を施行し,乳麋瘻を治癒せしめた症例を経験した.症例は52歳,男性.下咽頭癌のため咽喉頭全摘,頸部拡大リンパ節郭清術が施行された.術当日から左頸部の乳麋瘻を認め, OK432の局所注入による硬化療法を行ったが乳麋瘻の漏出が続くため,胸腔鏡下胸管クリッピング術を施行した.術前にリンパ管シンチグラフィーを施行し,胸管の走行異常のないことを確認した.胸腔鏡を右胸腔に挿入,食道奇静静脈間の胸管を同定し,横隔膜直上の胸管根部で胸管を三重にクリッピングした.術当日より乳麋の量は著減し,クリッピング施行後8日目には乳麋瘻は完全に停止した.頸部外科領域の術後乳麋瘻に対して胸腔鏡下胸管クリッピング術は乳麋瘻を確実に停止させる方法と思われる.