抄録
患者は31歳の授乳中の女性で,径2cmの左乳腺腫瘤を自覚し来院した.触診,超音波検査では境界明瞭な腫瘤であったため,線維腺腫を疑った.生検にて被膜を持つ黄色腫瘤であった.病理組織検査では,わずかな間質に分泌傾向を示す密な管状腺房様構造を示す上皮細胞増殖を認め,授乳性腺腫と診断された.授乳性腺腫は稀な疾患で,組織学的には分泌期乳腺,線維腺腫との鑑別,臨床的には悪性腫瘍,線維腺腫,葉状腫瘍との鑑別が必要となるが,稀な疾患のため術前診断されることが少ない.妊娠・授乳時に出現する乳腺腫瘍に対しては,本疾患を考慮すべきである.