日本臨床外科学会雑誌
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門脈ガス血症を呈した非閉塞性腸管虚血症の1例
仲田 裕木村 勝彦冨岡 憲明
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2000 年 61 巻 3 号 p. 670-674

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抄録
症例は狭心症,糖尿病で加療中の81歳男性.便秘のため自宅で浣腸を行った後,下痢と腹痛が続き入院した.腹部全体の自発痛と腹部膨満を認めたが,腹膜刺激症状はなかった. 9時間後に腹痛が増強し圧痛を認め, CTで門脈内ガス像を認めた.門脈ガス血症は消化管内のガス圧の上昇に伴い,数時間の経過で発生した.腹部血管造影で上腸間膜動脈末梢部の造影が不良であり,消化管壊死をきたす疾患の存在を疑い緊急手術を施行した. 80cmの壊死小腸を含め180cmの小腸を切除し端々吻合したが, 48時間後に死亡した.本症例は血管造影の所見と摘出標本に血管病変を認めなかったことから,非閉塞性腸管虚血症と診断した.非閉塞性腸管虚血症は腸管の低灌流に引き続いて発生する動脈攣縮によるものであり,その診断と治療はいかに早い段階で血管造影を行うかが重要である.
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