日本臨床外科学会雑誌
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狭窄型虚血性小腸炎の1例
向川 智英奥村 徹杉森 志穂三崎 三郎中野 博重
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2000 年 61 巻 3 号 p. 675-679

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抄録

最近われわれは狭窄型虚血性小腸炎の1例を経験したので報告する.症例は74歳,男性.平成8年9月15日食思不振,腹痛を主訴に来院し,イレウスと診断され入院となった.保存的治療により一時軽快したが,食事摂取のたびに症状が再燃した. 11月18日の注腸造影検査で盲腸が先細り状となり,空気の圧迫注入にてもバリウムの通過性は認められず,外科に紹介された.緊急手術にて回腸末端部から一部盲腸にかけて約10cmにわたる著明な瘢痕性狭窄を認めた.肺結核の既往があるため腸結核を疑い回盲部切除術を施行した.病理組織学的に狭窄部腸管はUl-II, Ul-IIIの潰瘍を形成し,粘膜に著明な炎症細胞浸潤,粘膜下層に血管の増生,高度の線維化が認められ,狭窄性小腸炎と診断された.腸管虚血の成因としては動脈硬化,肝硬変に伴った門脈圧亢進による静脈灌流障害,脱水などが推察された.

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