日本臨床外科学会雑誌
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多発性腸管穿孔をきたした胃癌術後のサイトメガロウイルス腸炎の1例
野元 雅仁竹村 和郎堀越 邦康民上 真也高橋 克之介山口 晋
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2002 年 63 巻 12 号 p. 2999-3003

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抄録

サイトメガロウイルス(CMV)腸炎は臓器移植やHIV感染症などのimmunocompromised hostにおける重篤な合併症として知られているが,健常者において発症することは稀である.われわれは胃全摘術後に多発性腸管穿孔を惹起したCMV腸炎の1例を経験したので報告する.症例は50歳の男性で, 3型胃癌に対し胃全摘術を施行した.術後28日,多発性大腸穿孔をきたし結腸全摘術,回腸瘻造設術を施行したが,その後も回腸穿孔をきたし再々開腹術を要した.摘出標本の免疫組織化学的染色によりCMV陽染細胞の浸潤がみられた. CMV腸炎と診断し, ganciclovirの投与を行ったところ,新たな穿孔はその後みられず,軽快退院した.原因不明の消化管穿孔に際しては,健常者といえどもCMV腸炎を念頭に置く必要があると考えられる.なお,われわれが検索しえた限り,穿孔で発症したCMV腸炎は過去の報告にはみられず,本症例が本邦初報告例である.

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