2003 年 64 巻 2 号 p. 474-478
症例は12歳,男児.右下腹部痛を主訴に1996年5月30日当院外科外来を受診した.腹部US, CTで回盲部に3×5cmの腫瘤を認め, WBC 15, 300, CRP 10.1と高値であった.全麻下に腫大した虫垂とこれに癒着していた腫瘤状の大網を切除し, 7病日目に退院となった.しかしその翌日,発熱と下腹部痛のために再入院し, CTで左腸腰筋前面に膿瘍を認め,手術時の摘出標本の病理組織検査では大網の炎症性肉芽腫の中に放線菌のコロニーが認められた.以後放線菌症の診断にて保存的加療を行い軽快した.小児の腹部放線菌症は稀な疾患であるが,炎症を伴う腹部腫瘤の鑑別疾患として念頭に置くべきである.