日本臨床外科学会雑誌
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大腿膿瘍をきたしたRichter型閉鎖孔ヘルニアの1例
仲田 裕成島 道樹冨岡 憲明
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2003 年 64 巻 2 号 p. 497-500

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抄録
Richter型に嵌頓した閉鎖孔ヘルニアで,腸管穿孔による大腿膿瘍を形成した1例を報告する.症例は88歳,女性.摂食不良と右下肢痛を主訴に来院し,右大腿内側の腫脹と発熱を認めた.イレウス症状はなく,腹部単純X線検査で右閉鎖孔周辺にガス貯留を認め, CT-scanで恥骨筋と閉鎖筋の間に膿瘍を認めた.以上より右閉鎖孔ヘルニア嵌頓穿孔による大腿膿瘍と診断し,手術を施行した.開腹すると回腸が閉鎖孔にRichter型に嵌頓,穿孔しており部分切除を施行,右閉鎖孔は縫縮閉鎖し,卵管を縫着した.大腿部では恥骨筋下の膿瘍腔を開放しドレナージを行った.嫌気性菌感染を疑い,大腿切開創は開放創とした.培養ではクレブシェラ,腸球菌,嫌気性菌の混合感染であった.術後は順調に経過した.大腿膿瘍は閉鎖孔ヘルニアの合併症としては稀なものであるが,症状が出現しにくく重篤な感染症に移行する可能性もあり,注意を要する.
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