症例は,交感神経ジストロフィーと右足関節骨折により長期臥床状態となっていた体重116kgの27歳女性.主訴は突然の呼吸困難と胸部不快感で心電図上,肺塞栓症が疑われた.局所的血栓溶解療法を行うため,緊急肺動脈造影が施行された.しかし,肺動脈主幹部にまで及ぶ広範な血栓と右心不全症状のためショック状態となり,緊急肺塞栓血栓除去術を施行した.人工心肺を装着し,右肺動脈主幹部より血栓を26g摘出した.術後,呼吸循環動態は改善した.術後も臥床状態が継続することと,深部静脈血栓症が残存することから,抗凝固療法と共に下大静脈に永久的血栓捕捉フィルターを留置し再発を予防した.本症例は,ショック状態の持続と肺動脈主幹部に血栓が及んだため,緊急に外科的血栓摘出術を施行し救命しえた.急性肺塞栓症の治療法は診断がつき次第,迅速な判断が重要と考えられる.