2003 年 64 巻 4 号 p. 897-901
交通外傷などの増加にて腹部鈍的外傷は増加傾向にあるが外傷後遅発性小腸狭窄は比較的稀な病態である.本症は軽微な外傷例に発生することが多く,また完全狭窄を示すことは少なく早期診断は困難とされる.今回,同症例2例を経験したので報告する.
症例1は50歳,男性.交通事故にて腹部打撲.受傷後26日目にイレウス症状出現.一時保存的に軽快したが, 59日目再度イレウス症状出現. CTで狭窄様腸管認めたが拡張型心筋症による心機能低下ありイレウス管挿入にて治療開始.小腸造影で回腸に狭窄部位確認し86日目に手術を施行した.症例2は44歳,男性.交通事故にて腹部打撲.受傷後43日目に腹痛で外来受診. CT上小腸壁の局所的な狭窄が疑われ本症を疑い手術を施行した. 2症例とも術後良好に経過した.本症確定診断には小腸造影が最も有用であるが病態を念頭に置いたCT,超音波検査を併用することにより,より速やかに治療に移行できると考える.