日本臨床外科学会雑誌
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多量の乳糜腹水にて発症した小腸間膜脂肪織炎の1例
水谷 和毅小西 治郎林田 良三西村 寛吉森 健一白水 和雄
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2003 年 64 巻 4 号 p. 902-906

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抄録

症例は73歳,男性.腹部膨満感を主訴に近医を受診し,多量の腹水を指摘され当院紹介入院となった.腹腔試験穿刺にて乳糜腹水が採取され,腹部CTでは腹部大動脈腹側の腸間膜に石灰化像を伴う径約5cmの腫瘤陰影がみられた.乳糜腹水の原因疾患として悪性腫瘍,結核などが疑われたが,全身精査および腹腔鏡下組織生検にても疾患を同定することはできなかった.腹水はその後も減少傾向がみられなかったため,診断および治療目的にて開腹手術を施行した.開腹所見で乳糜腹水の他, Treitz靱帯より約80cmの部より肛門側約210cmに渡る小腸に浮腫,リンパ液の鬱滞を認めた.同部の腸間膜は硬化,短縮し,中枢側に石灰化を伴う腫瘤が存在した.この腫瘤により小腸および腸間膜のリンパ管が閉塞,破綻し乳糜腹水が発生したと考えられた.浮腫を起こした小腸を切除することにより乳糜腹水は消退した.病理組織診断で腸間膜脂肪織炎と診断された.

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