日本臨床外科学会雑誌
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腹部鈍的外傷による遅発性小腸狭窄の1例
廣吉 基己荻野 和功黒田 大介守友 仁志藤田 博文鈴木 知志
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2003 年 64 巻 4 号 p. 893-896

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抄録

交通事故による腹部鈍的外傷後の遅発性小腸狭窄により,腸閉塞をきたした1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
症例は58歳,女性.歩行中,車にはねられCTでfree airがみられたため,穿孔性腹膜炎の診断にて開腹手術を施行した.穿孔部を含めて約40cmの小腸を切除した.術後19日目に嘔吐し,術後26日目には正中創部より小腸液の流出を認めた.腸閉塞,小腸瘻の診断にて4カ月間保存的に治療するも軽快せず,再度開腹手術を行ったところ,前回吻合部より約50cm肛門側に瘻孔の開口部を認め,その肛門側で小腸はほぼ完全閉塞となっていた.狭窄部より約20cmにわたり小腸の粘膜欠損と内腔の狭小化を認め,病理組織学的には狭窄部では粘膜は萎縮状で線維化が慢性炎症を伴ってみられた.その後皮下膿瘍を認め,瘻孔造影で上行結腸が造影されたため,回盲部切除術を行った.回腸末端より約13cmの部位に狭窄を認めた.同部より口側の回腸はやや拡張していた.
腹部鈍的外傷後の遅発性小腸狭窄は自験例を含めて39例の本邦報告例があったが,膜様狭窄をきたしたのは本症例が2例目であった.

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