2004 年 65 巻 9 号 p. 2383-2387
腸結核により小腸穿孔をきたした1例を経験したので報告する.症例は65歳の女性.約10年前より脳梗塞による左半身麻痺を認めた.腹痛を訴え近医受診し,入院加療を受けていた.入院後3日目,筋性防御を認めたため当院紹介受診となった.胸部X線写真で右上肺野を中心に浸潤影を認め,右横隔膜下に遊離ガス像を認めた.腹部CT上遊離ガス像を認め,消化管穿孔の診断にて緊急手術施行した.右下腹部を中心とした膿性腹水があり,回盲部より20cm口側に全周性輪状潰瘍を認め,同部位が穿孔していた.小腸穿孔による汎発性腹膜炎と診断し,穿孔部腸管を部分切除した.病理組織学的所見では, Langhans型巨細胞.類上皮細胞.リンパ球よりなる腸結核の像であった.喀痰培養検査およびPCRにて結核菌と診断し,抗結核療法を開始したが,エンドトキシン・ショックによるDICの状態からMOFへ移行し,第12病日に死亡した.