抄録
Fitz-Hugh-Curtis症候群は,性感染症を原因とする肝周囲炎である.クラミジア・トラコマティス感染症による本症候群の3例を報告する.年齢は25~36歳の女性で,いずれも右上腹部痛を主訴に来院した.全例ともに血清クラミジアIgA, IgG抗体が上昇していた.腹部超音波検査では, 2症例で肝右葉表面に腹水と思われる低エコー域を認めたが, Morison窩には認めなかった.また,超音波プローブで肝表面を圧迫すると全例に圧痛が増強した.腹部CT検査では,全例に肝右葉表面に腹水が確認されたが,やはりMorison窩には認めなかった.さらに,造影CT検査を施行した1例では,肝被膜の濃染像を認めた.以上の所見は,クラミジア肝周囲炎を診断する上で重要な所見と考えられた.なお,全例ともに抗生剤により軽快した.最近,クラミジア感染症は増加傾向にあり,若い女性の右上腹部痛の診断には,本症候群を念頭に置くことが重要と考えられる.