日本臨床外科学会雑誌
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NSAIDの長期使用による多発性隔膜様小腸狭窄症(diaphragm disease)の1例
近藤 英介林 伸一鈴木 弘文新藤 寛山本 和夫山森 秀夫
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2005 年 66 巻 3 号 p. 647-652

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抄録

症例は72歳の女性,嘔吐,食指不振とめまいを繰り返し受診し,血液検査で小球性低血色素性貧血と低タンパクを認めた.患者は椎間板ヘルニアで, 24年間のNSAIDの服用,座薬の使用歴があった.腹部レントゲン, CTで腸閉塞の所見を認め,小腸イレウスの診断で小腸造影を施行したところ,分節,球状に拡張した小腸を認めた.流出小腸液の潜血反応を調べたところ陽性であった.以上の結果より小腸イレウスと出血の診断で小腸部分切除術を行った.切除標本では小腸に多数の隔膜様の輪状狭窄を認め,狭窄が軽度の部位には浅い潰瘍を伴っていた.病理では狭窄部位での粘膜の薄化と粘膜筋板の肥厚と軽度の炎症細胞浸潤を認めた.本症例は,多発する回腸の隔膜様の輪状狭窄が原因であり, 1968年に岡部らが非特異性小腸潰瘍として報告した症例と本症例は病態が類似していたが,発症年齢や狭窄の形状所見,狭窄の原因となる潰瘍病変の有無などが異なっていた. NSAIDの長期使用歴があり, NSAIDの長期使用に起因し,小腸に稀に生じる“diaphragm-like disease”隔膜様狭窄症と考えられた.

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