2005 年 66 巻 5 号 p. 1076-1079
症例は63歳,男性.下腹部痛を主訴に来院.急性腹症の診断にて緊急手術施行.回腸の約60cmの範囲に多発性の腫瘍を認め,その一部が小腸間膜に穿通していた.穿通部を含め約70cmの小腸切除と所属リンパ節の可及的な郭清を行い手術を終了した.化学療法 (CHOP) を施行したが,術後73日目に永眠された.病理組織学的所見上は小腸原発のT細胞性悪性リンパ腫で,新WHO分類上enteropathy typeであった.また免疫染色上CD56, CD8ともに陽性であった.本症例は複数の予後不良因子を併せ持つ悪性リンパ腫で,術後の化学療法でもほとんど効果が得られず,極めて予後不良な経過をたどったと考えられた.