日本臨床外科学会雑誌
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肝原発性腫瘍との鑑別に難渋した後腹膜神経鞘腫の1例
名和 正人土屋 十次浅野 雅嘉立花 進川越 肇熊澤 伊和生
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2006 年 67 巻 2 号 p. 473-477

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抄録

症例は74歳,女性, 55歳時にB型慢性肝炎の既往があった.上腹部不快感を主訴に受診し,腹部超音波検査にて肝尾状葉に腫瘍像を指摘され入院となった.腹部CT検査では下大静脈を外方へ圧排し辺縁が強く造影された径約6cmの充実性病変を認めた. MRI検査では腫瘍は下大静脈と大動脈間を占拠し,肝実質を腹側に圧排し, T1で低信号, T2で高信号を示した.腹腔および上腸間膜動脈造影では腫瘍濃染像認めなかった.肝腫瘍マーカーはいずれも陰性で,消化管や女性器にも異常所見はなかった.肝尾状葉原発腫瘍の診断で開腹したが,腫瘍と尾状葉は一部が連続しているのみで腫瘍は肝外性に発育していた.尾状葉肝実質を一部鋭的に合併切離し,さらに下大静脈を鈍的に剥離し腫瘍を摘出した.病理学的検査にてAntoni A型の良性神経鞘腫と診断され,また,肝~腫瘍移行部は互いの被膜が介在していた.病理所見と画像,開腹所見より後腹膜原発神経鞘腫と診断された.

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