1992 年 33 巻 8 号 p. 1012-1016
β2-ミクログロブリン(β2-MG)は,腫瘍マーカーのひとつとして知られている。特に,多発性骨髄腫患者においては,血清β2-MG値はもっとも重要な予後決定因子とされている。われわれは,14例の多発性骨髄腫(MM), 13例の良性M蛋白血症(BMG), 25例の健常者の血清β2-MG値を,ラジオイムノアッセイ(RIA) 2抗体法を用い比較した。また多発性骨髄腫患者腎のβ2-MGを抗β2-MGポリクローナル抗体,ペルオキシダーゼ—抗—ペルオキシダーゼ(PAP)法を用い染色し,各々の臨床症状と染色態度を比較検討した。血清β2-MG値は,健常者群においては加齢とともに上昇傾向にあり,また骨髄腫群においては,同年代健常者と比較すると有意な高値を示した。腎糸球体でβ2-MG染色陽性となった患者はほとんどが80歳台で経過は短かった。腎糸球体での染色陽性強度は骨髄腫細胞よりのβ2-MG産生量を反映していると考えられた。