臨床血液
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症例
完全寛解中に脳幹部に広範な脱髄病変をきたした急性リンパ性白血病の13歳女児例
野田 美恵子西村 甲池田 昌弘宮川 知士原 光宏番場 正博木下 明俊中沢 真平
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1992 年 33 巻 8 号 p. 1025-1030

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抄録

1987年2月に発症した13歳女児のALLに対し,TCCSG L84-11 protocolで治療し,同年6月完全寛解を得た。1988年4月維持療法中に突然,歩行困難,めまいおよび食思不振を訴えた。入院時,失調歩行,右方視における右方向水平眼振,両側膝蓋腱反射亢進を認めた。入院後,感情失禁,尿失禁,左顔面神経麻痺,左外転神経麻痺が出現し,5月中旬には右上下肢痙性麻痺,右知覚麻痺があきらかとなり,左側橋底部尾部の病変部が推定され,同時期のMRIで病変部が確認された。病状は,進行性で,入院5カ月後,中枢性の無呼吸発作を繰り返し死亡した。病理所見では,橋,延髄および脊髄上部にかけて広範な脱髄病変が認められた。大脳半球および小脳には病変を認めなかった。脳幹部に限局した脱髄病変の原因を明らかにする陽性所見は得られなかったが,頭蓋放射線治療と髄注療法の影響の可能性が考えられた。

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© 1992 一般社団法人 日本血液学会
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