1992 年 33 巻 8 号 p. 1036-1040
症例:30歳,女性。昭和52年はじめての溶血発作をおこし,以後くり返すようになった。検査結果より不安定血色素症が疑われ,貧血の進行も著しいため昭和54年摘脾術施行。溶血はおさまらず,腎機能障害も進行。昭和59年8月貧血と全身の浮腫で当院入院。入院時現症:貧血,チアノーゼ,四肢の浮腫を認めた。入院時検査:Hb 7.1 g/dl, LDH 830 IU/l, ハプトグロビン28 mg/dl以下。熱変性試験,イソプロパノール試験ともに陽性。赤血球内酵素異常,血色素のアミノ酸配列の異常は認められず。入院後経過:溶血発作とともに腎機能も徐々に悪化,11月に透析導入となる。患者の所持品より白色粉末が発見され,phenacetinと鑑定された。尿中N-acetyl-P-aminophenolは強陽性を示した。昭和52年より,phenacetinの服用を認めた。薬剤中止後,溶血発作は完全に消失した。診断に困難を覚えた症例である。