臨床血液
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症例
人工気胸術後の慢性膿胸壁に発症した悪性リンパ腫の1例
橘 順子福徳 雅章竹内 洋子吉岡 律子広瀬 優子清水 史郎菅井 進滝口 智夫紺田 進湯浅 幸吉清水 健
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1992 年 33 巻 8 号 p. 1041-1045

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抄録

肺結核人工気胸術後の慢性膿胸壁に悪性リンパ腫を発症した1症例を経験したので報告する。症例:60歳男性,26歳時,肺結核に対し右人工気胸を施行。60歳時,右緑膿菌性膿胸を合併し,治療のため右開窓術を施行。処置中,膿胸壁より増大する腫瘤が出現し,生検の結果“malignant lymphoma (diffuse large, immunoblastic, B cell type)”と診断し,VEAP-Bleo. 療法にて治療を開始した。治療に対する反応は良好であった。右胸郭の開放腔を閉鎖するため,化学療法開始後7カ月目に広背筋および大網充填術を兼ねた胸郭形成術を行った。手術後約1.5年間にわたり月に1度の化学療法を施行した後は無治療で経過観察中であるが,初回治療開始時より49カ月間完全寛解を続けている。このようなリンパ腫の症例で膿胸腔を充填術により閉鎖した報告はわれわれが検索したかぎりでは認めず,また2年間無治療で寛解を続けている点も興味深い。

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© 1992 一般社団法人 日本血液学会
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