臨床血液
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症例
リンパ節と骨髄にて異なった形質を示したCD7陽性幹細胞性白血病の1例
郷田 治幸安部 康信油布 祐二牟田 耕一郎勝野 誠後藤 達郎定村 伸吾西村 純二名和田 新平田 譲治秋吉 都美木村 暢宏
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1992 年 33 巻 8 号 p. 1046-1051

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抄録

症例は27歳,男性。1990年7月全身リンパ節腫脹出現し,同年9月左鼠径部リンパ節生検にてリンパ芽球型悪性リンパ腫と診断。骨髄穿刺にてペルオキシダーゼ染色(POX) (-), CD7 (+), CD4 (-), CD8 (-), CD13 (-), CD33 (-)芽球を55.4%認めた。MACOP-B療法にて骨髄中のリンパ芽球や体表部リンパ節腫脹は一旦消失するも,同年12月骨髄およびリンパ節に再発した。骨髄ではPOX (+), CD7 (+), CD13 (+), CD33 (+)芽球を36.4%認め骨髄性白血病へのlineage switchと診断した。初発時と再発時の芽球は染色体分析にて11p-という共通の核型異常を認め,またTCRδ鎖,γ鎖,β鎖遺伝子の同一再構成バンドを認めたため,同一クローン由来と考えられた。興味深いことに再発時,頸部リンパ節より施行した吸引細胞診では骨髄と異なるPOX (-)芽球の増殖を認めた。本症例は多系統(リンパ系および骨髄系)へ分化能を有す多能性幹細胞レベルでの腫瘍化と考えられた興味ある症例である。

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© 1992 一般社団法人 日本血液学会
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