1992 年 33 巻 8 号 p. 1084-1089
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)にビンクリスチン(VCR)緩速静注が著効した1例を経験した。症例は40歳女性。突然の性器出血によりショック状態となり当院に入院した。血液検査上著明な貧血,血小板減少,LDH上昇を認めた。当初ステロイドパルス療法,免疫グロブリン大量投与を試みたが無効であった。次第に意識障害,腎機能障害が出現しTTPと診断し,血漿交換を施行した。意識レベルの改善,LDHの低下を認めたが,貧血,血小板減少は続いた。そこで週1回VCR 1∼2 mgを4∼8時間かけて緩速静注したところ,著効を呈し寛解に至った。その後VCR中止,あるいは抜歯に伴いTTPの再燃を繰り返したが,いずれもVCR再開により寛解再導入に至った。VCR緩速静注は難治性のTTPに対して,試みる価値のある治療法と思われる。