臨床血液
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35 巻, 1 号
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綜説
臨床研究
  • 林 泰秀, 菊地 陽, 小林 茂俊, 鹿野 高明, 花田 良二, 山本 圭子, 外松 学, 石本 浩市, 迫 正広, 山森 俊治, 森脇 浩 ...
    1994 年 35 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    E2A遺伝子とt(1;19)の転座切断点をはさむオリゴマーを用いて小児ALL 50症例の検討を行った。1;19転座をもつ10症例のサザン解析ではXba I, Bgl IIEco RIの消化で10例中9例で再構成がみられ,再構成のみられなかった1例はALLの予後の良いとされている高2倍体の症例であった。RT-PCR法によるE2A/PBX1のキメラRNAの検討では,検索できた1;19転座の7症例中6例で期待された164 bpsのバンドが検出されたのに対し,E2A再構成がみられなかった1;19転座の1例と1;19転座を有さない10症例ではバンドが検出されなかった。追跡できた3症例では4カ月後の寛解期にはバンドは消失していた。またt(1;19)のないALL 40例の検討では,t(11;19)の4例を含め,再構成は認められなかった。t(1;19)-ALLは分子遺伝子学的診断が可能であり,RT-PCR法を用いて残存白血病細胞の追跡が可能と思われた。
  • —第3報:長期成績—
    波多 智子, 栗山 一孝, 川口 康久, 藤本 健志, 舘 祐一, 斉藤 真美子, 対馬 秀樹, 松尾 裕司, 田畑 聡, 福島 卓也, 渕 ...
    1994 年 35 巻 1 号 p. 14-22
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    1984年1月から1988年4月まで成人急性リンパ性白血病(ALL) 20例,リンパ芽球性リンパ腫2例に対し,修正L-10Mプロトコールによる化学療法を施行した。その観察期間中央値が5年をこえたので長期成績を報告する。対象は男性13例,女性9例。年齢中央値は31歳(15∼71歳),Ph1陽性例は認めなかった。完全寛解(CR)率は81.8%, 5年寛解持続率は33.3%であった。寛解率に影響する有意な予後因子は見出せなかった。寛解期間に対する有意な予後因子は年齢およびCRに到達するまでの期間であった。35歳以下の群では5年寛解持続率は54.5%であった。またこの群では白血球数も有意な予後因子であり,白血球数が1×104lより多い症例は全例再発し,それ以下の症例は5年寛解持続率は75%であった。今後は成人ALLにおいてはリスクファクターによる治療の層別化が必要と思われた。
  • 清水 義文, 岡本 真一郎, 湯尻 俊昭, 西脇 嘉一, 清水 透, 新道 英一, 白戸 りさ, 大島 康雄, 柳沢 孝次, 宮腰 重三郎, ...
    1994 年 35 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    同種骨髄移植後,慢性移植片対宿主病(cGVHD)によると思われる気管支肺病変をきたした3症例を報告する。気管支肺病変は移植後120∼250日に発熱,乾性咳そう,息切れを伴って出現し,発症時,2例で他臓器に広汎型慢性GVHDによる病変が認められた。CRPは全例で軽度上昇し,AaDO2の開大を伴う低酸素血症が認められたが,呼吸機能検査では閉塞性病変は認められなかった。胸部CTでは,両肺野に多発性小斑紋状間質性陰影が認められた。全例で気管支肺胞洗浄(BAL)液中のリンパ球は増加していたが,細菌,真菌培養,CMV shell vial culture, pneumocystis carinii cystsは陰性であり,経気管支肺生検(TBLB)にて肺胞隔壁にリンパ球の浸潤が確認された。さらに免疫抑制療法が効果的であった経過より,これらの症例の気管支肺病変は慢性GVHDによる可能性が示唆された。
  • 坂巻 壽, 高本 滋, 柴田 弘俊
    1994 年 35 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    わが国における骨髄移植の現状と骨髄採取の合併症を調査するために全国91の骨髄移植施設に郵送によるアンケート調査を行った。74施設より回答を得た。これらの施設で,1992年8月までに同種ないし同系骨髄移植は2,329件行われており,成人ドナーから1,688件,小児ドナーから641件骨髄が採取されていた。骨髄採取の準備と方法については各施設間で若干の差異が認められた。術中の合併症としては主として麻酔によるものが多く,次のようなものであった。:血圧低下73件(18カ月後に死亡した1例を含む),不整脈7件,呼吸停止1件,不穏状態3件,喘息1件,悪性高熱症1件,歯のぐらつき1件と穿刺針破損1件。術後の合併症としては骨髄採取に関するものが主で次のようなものであった。:一過性の発熱731件,長期の疼痛や倦怠感26件,肝障害10件(2例の非A非B型肝炎を含む),感染4件,血圧低下1件,排尿困難1件,ケロイド1件。またこれらの合併症は小児ドナーでは成人ドナーに比して明らかに低率であった。
  • 鶴ケ野 しのぶ, 戸川 敦, 曽田 泰, 三輪 哲義, 高久 史麿, 湯尾 明, 山田 清美, 平井 久丸
    1994 年 35 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    前骨髄球性急性転化した慢性骨髄性白血病(CML)に対しall-trans-retinoic acid (ATRA)を使用し2, 3の知見を得たので報告する。患者は22歳男性。慢性期にbusulfan次いでIFNαを3年3カ月使用し,CML診断後5年目にAPLに急性転化した。染色体分析の結果は51, XY, +der(1)t(1;17)(q11;q11), +7, +8, +8, t(9;22)(q34;q11), +22q-, 遺伝子解析でPML-RARα遺伝子の再構成を認めた。ATRAの投与により芽球の分化誘導がみられたが,Wiernikらの報告例と同様完全寛解には至らなかった。これがde novo APLとの病態の違いによるものなのか,あるいはde novo APLと同様ATRAの血中濃度があがらなくなったためなのか不明である。本症とWiernikらの症例との類似点を上げると,慢性期に両症例ともIFNαを用いていること,染色体分析で15, 17転座がみられずまた1番染色体の異常を巻き込んでいること,ATRA投与により完全寛解が得られなかったことなどである。
症例
  • 牧野 虎彦, 中原 勝志, 高塚 祥芝, 下高原 茂巳, 宇都宮 與, 花田 修一, 徳永 正義, 有馬 暉勝
    1994 年 35 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    62歳,男性。1990年3月より上腹部不快感,食欲不振出現し当科入院となった。胸部X線検査にて右縦隔に腫瘤様陰影,腹部超音波検査にて腹腔内リンパ節腫大を認めた。胃内視鏡検査にて辺縁不整な巨大潰瘍を認め,胃粘膜生検で悪性リンパ腫の結果を得た。血清抗HTLV-1抗体の結果も陽性であり,以上よりATL(リンパ腫型)と診断した。LSG4プロトコールやRCMプロトコールなどの治療を行ったが,抗腫瘍効果はいずれも一時的であった。そこで,1990年11月よりCPT-11を毎週40mg/m2 3日間連日投与した。CPT-11の投与開始2週間で完全寛解が得られ,その後もCPT-11を投与継続し130日間の寛解状態が維持できた。特に問題となる副作用は認められなかった。以上より,CPT-11はATLに対する治療薬の一つとして有用と考えられた。
  • 小沢 昌彦, 畑 裕之, 川口 辰哉, 辻 典秀, 森 俊輔, 原田 奈穂子, 中橋 栄太, 坂田 研明, 松崎 博充, 高月 清
    1994 年 35 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は57歳の男性。胸痛および乾性咳嗽を主訴とし,胸写上胸部腫瘤陰影,貧血,高LDH血症を伴ったIgA-κ型の多発性骨髄腫と診断された。各種抗癌剤による化学療法に抵抗性で,急激な腫瘤の増大,LDHの急上昇を認め約4カ月の経過で死亡した。高LDH血症を伴う多発性骨髄腫は比較的まれであるが,LDH低値例に比べて予後不良とされている。本症例でも腫瘤の急速な増大と相関してLDHの著増が認められ,LDHが悪性度や病勢を表す良い指標であると考えられた。一方,経過中に感染の所見が認められないにもかかわらず,末梢血および胸水中に過分葉を伴う好中球増多が認められた。これは,胸水由来骨髄腫細胞の培養上清中に好中球誘導活性を認めたことより,腫瘍細胞由来の活性物質にもとづく現象であることが示唆された。
  • 高田 功二, 藤田 宏夫, 角張 綾子, 斎藤 正博, 呉本 慶子, 石本 浩市, 篠原 多美子, 藤本 純一郎
    1994 年 35 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    多彩な精神神経症状を呈し,診断および治療に苦慮した悪性リンパ腫の1例を報告する。症例は9歳,男児で,幻覚,妄想などの精神症状,痙攣,意識障害などを認めた。脳生検にて悪性リンパ腫が疑われ,当科に紹介入院となった。髄液中に未熟B細胞型の表面マーカーを有する多数の芽球を認めた。CT検査にて頭蓋内に腫瘍は認めなかったが,右篩骨洞内に腫瘤を認め,同部位の生検より髄液中の細胞と同様の表面マーカーを発現していることが確認された。以上より右篩骨洞および中枢神経系に浸潤を認めた非ホジキンリンパ腫と診断しえた。脳脊髄への照射,抗癌剤髄注および全身的化学療法により諸症状は改善し,髄液中の芽球および右篩骨洞内腫瘍の消失を認めた。しかし,治療継続中に頭蓋内出血をきたし,治療開始10カ月後に呼吸不全にて死亡した。
  • 早津 邦広, 永井 孝一, 阿部 惇, 村川 英三, 関谷 政雄
    1994 年 35 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は54歳男性。右上葉の大葉性肺炎と汎血球減少症(WBC 400/μl, RBC 297万/μl, Hb 10.1 g/dl, Plt 5.6万/μl)を認め入院した。骨髄穿刺にて白血病芽球の増加(61.6%)を認め,AML (M2)と診断した。抗白血病剤による化学療法は行わず,感染症の治療のため,抗生物質多剤併用療法とrhG-CSFの投与を行い,肺炎の改善と白血病の寛解に至った。その後,rhG-CSF投与を継続していたが,短い寛解期間の後に再燃した。入院時に認められた骨髄細胞の染色体分析による核型異常(47, XY, +8)は寛解期にも残存していた。再燃後はBHAC-DMP療法にて二度目の寛解に至り,染色体分析でも正常核型となった。本例において,初回の寛解は,主としてrhG-CSFの白血病細胞に対する分化誘導作用により得られた可能性があると思われた。しかし,白血病の自然寛解の可能性も否定できない。
  • 宮林 麻里, 北原 文徳, 石井 栄三郎, 小池 健一, 中畑 龍俊, 小宮山 淳
    1994 年 35 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    化学療法中に重症感染症を合併し,granulocyte-colony stimulating factor (G-CSF)が奏効した急性骨髄性白血病(FAB分類M3)の1男児例を経験した。症例は5歳男児で,多剤併用化学療法により寛解を得たが,13カ月後に再発し当科へ再入院した。BHAC-MMP療法(BH-AC, MIT, 6-MP, PSL) 2クール終了後の骨髄抑制期に発熱し,右下顎歯周囲炎から下顎底蜂窩織炎を併発した。このときの末梢血好中球数は5/μlで,血液学的には寛解状態であった。各種治療にもかかわらず,10日間以上の高熱持続,局所症状の悪化がみられたため,G-CSF 400 μg/m2/日の皮下投与を開始した。投与開始後5日目より末梢血好中球数が回復し,解熱傾向が出現した。なお,急性期の口腔内および解熱後に自壊した歯周囲膿瘍から緑膿菌が検出された。G-CSF投与によるAMLの再発はみられなかった。BHAC-MMP療法3クール終了後,G-CSFを併用しながら姉からの同種骨髄移植を行い,現在完全寛解を維持している。
    AML治療の支持療法にG-CSFを併用するか否かは議論の的であるが,本症例のごとく救命を目的とした使用は積極的に試みるべきと考えられる。
  • 岡 敏明, 鈴木 豊, 清水 重男, 坂田 葉子, 東 寛, 金子 安比古
    1994 年 35 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    3歳の女児に両側の眼球突出と発熱が出現した。入院時の末梢血検査では,Hb 8.7 g/dl, 血小板数10.6×104l, 白血球数は30,890/μlで,一部にAuer bodyを有するperoxidase染色陽性の芽球が31%出現していた。骨髄スメアー検査では分化傾向のある異型芽球を約22%認め,FAB分類のM2型AMLと診断された。頭部CTスキャンでは,両側の眼窩内に腫瘤が認められた。骨髄細胞の染色体検査ではX染色体の欠失を示したが,8; 21転座は認められなかった。初発時の骨髄細胞の分子生物学的解析では,AML1遺伝子の再構成が起きていることが確認できた。また,RT-PCR法を行い,AML1遺伝子と8番染色体転座部位遺伝子MTG8によるキメラmRNAが検出できた。以上より本症例は,白血病細胞内で8; 21染色体のmasked translocationを起こしている症例であると判断した。
  • 川端 良成, 中鉢 明彦, 三浦 偉久男, 斉藤 昌宏, 綿貫 勤, 三浦 亮
    1994 年 35 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は70歳,男性。1990年6月発症のIBL様Tリンパ腫。化学療法にて寛解を維持していたが,1992年5月リンパ節腫脹,汎血球減少が進行し再入院。肝不全,消費性凝固障害が急速に悪化,骨髄で異型細胞の浸潤と血球貪食マクロファージの増加を認め,リンパ腫の再発と診断し化学療法を行うも第7病日に多臓器不全で死亡した。IBL様Tリンパ腫に合併したhemophagocytic syndrome (HPS)の報告はきわめてまれで文献上これまで一例の報告があるのみである。本症例ではHPSの原因となる細菌,ウイルス感染はなく,リンパ腫の再発と同時にHPSが発症したことからHPSはリンパ腫に随伴したと考えられる。HPS発症時に血清サイトカイン(interferon-γ, interleukin-1β, tumor necrosis factor-α)が著明高値を示し病態との関連が示唆された。
  • 新津 望, 志越 顕, 梅田 正法, 白井 達男
    1994 年 35 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    ADH不適切分泌症候群(SIADH)と自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を合併したLennert's lymphomaを報告する。症例は76歳,女性。頚部リンパ節腫脹にて入院しリンパ節生検にてLennert's lymphomaと診断した。また同時にSIADH, AIHAと診断し,COP-BLAM療法を開始した。その後リンパ節の縮小,SIADHおよびAIHAの改善を認めCOP-BLAM療法計3クール施行した。しかし,再度リンパ節の腫脹,低Na血症が出現したためIMV-triple P療法に変更した。しかし患者はアスペルギルス肺炎にて死亡した。本症例のSIADHの原因は間脳下垂体系のリンパ腫細胞の浸潤によりADH分泌のfeed back機構の異常によると推測された。
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