1995 年 36 巻 11 号 p. 1295-1299
急性白血病では稀に13トリソミーが単独の染色体異常として報告されているが,慢性骨髄性白血病(CML)ではこれまで2例が報告されているのみである。今回13トリソミーを単独の異常として有したフィラデルフィア(Ph)染色体陰性CML症例を経験した。症例は68歳男性。他疾患にて治療中白血球増加を指摘された。約7カ月後,急激に白血球の増加をきたし(108,000/μl), 脾腫が明らかとなった。好中球アルカリフォスファターゼ活性は中等度に低下し,形態学的にCMLに合致していると考えられたが,Ph染色体,BCR遺伝子の再構成共に見られず,13トリソミーが単独の染色体異常として確認された。13トリソミー単独の異常を有する急性白血病では,多系統にわたるマーカー発現例が多く予後不良の一群を形成している可能性が示されている。さらに多能性幹細胞疾患である骨髄異形成症候群の中にも若干例の報告があり,単独で13トリソミーを持つ血液疾患は,未分化な幹細胞レベルでの腫瘍化をきたした一連の疾患群とも考えられ,今後も症例の集積が必要と思われた。